ミヒャエル・エンデの「モモ」
映画にもなりましたし、あまりにも有名なので、
いまさら、なのですが。
やっぱりおすすめ。
特にこの一節。
道路掃除夫のべッポの言葉です。
少し長いのですが、引用しますね。
「なあ、モモ、」と彼はたとえばこんなふうに始めます。
「とっても長い道路を受けもつことがよくあるんだ。
おっそろしく長くて、これじゃとてもやりきれない、こう思ってしまう。」
彼はしばらく口をつぐんで、じっとまえのほうを見ていますが、
やがてまたつづけます。
「そこでせかせかと働きだす。どんどんスピードをあげてゆく。
ときどき目をあげて見るんだが、
いつ見てものこりの道路はちっともへっていない。
だからもっとすごいいきおいで働きまくる。
心配でたまらないんだ。
そしてしまいには息が切れて、動けなくなってしまう。
こういうやりかたは、いかんのだ。」
ここで彼はしばらく考えこみます。
それからやおらさきをつづけます。
「いちどに道路ぜんぶのことを考えてはいかん、わかるかな?
つぎの一歩のことだけ、つぎのひと呼吸のことだけ、
つぎのひとはきのことだけを考えるんだ。
いつもただつぎのことだけをな。」
またひとやすみして、考えこみ、それから、
「するとたのしくなってくる。これがだいじなんだな。
たのしければ、仕事がうまくはかどる。
こういうふうにやらにゃあだめなんだ。」
そしてまたまた長い休みをとってから、
「ひょっと気がついたときには、
一歩一歩すすんできた道路がぜんぶ終わっとる。
どうやってやりとげたかは、じぶんでもわからん。」
彼はひとりうなずいて、こうむすびます。
「これがだいじなんだ。」
ここだけでも、この本を買う価値あり。
文庫本もありますが、単行本で持ちたい本。
大切な人へのクリスマスプレゼントに。