【本】 弟の戦争

ロバート・ウェストール氏の作品をご紹介します。

氏の作品はどれも大好き。
今日ご紹介するのは、「弟の戦争

舞台はイギリス。
不思議な力を持った弟に起きた事件を
兄の目で綴っています。

弟の不思議な力とは、
弱いものの気持ちがくみ取れる力。
乗り移ると言ってもいいでしょう。

ある日、弟は「僕は、イラクの少年兵だ」と言い始めます。
やがてその少年兵は…

全てが終わり、ごく普通(不思議な力を持たない)の少年に
なった弟と日常について、兄が語るラストに胸を打たれます。

長いけれど、引用しますね。

ここから————————–

ふとぼくはこわくなる。

もうだれも、家の外で起きることを
少しも気にかけなくなってしまったみたいだから。

けがをしたリスも、アフリカで飢えに苦しむ人も、
前はよくお母さんを訪ねてきた困っている家族も、
もういない。

いったい、今はだれに面倒をみてもらっているんだろうか。

フィギスはぼくらの良心だった。
頭がおかしいんじゃないかと思う時もあったけど、
それでもぼくらにはフィギスが必要だった。

ぼくらのまわりには、あちこちに、深く切れ込む湾がある。
人と人の間に深い溝がある。

ちょうどあの戦争の舞台となったペルシャ湾のような。

フィギスは、その溝に橋をかけようとした子どもだった。

ここまで———————–

遠くのできごと、
時間と共に薄れゆく共感、
そんなことを感じるとき、
読み直したい本です。

(in 松江)

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