谷崎潤一郎の感性 パーソナルカラーも!

これもいまさら、というべきかもしれませんが、
谷崎潤一郎の陰翳礼讃 (いんえいらいさん)をご紹介します。

アーティスト、デザイナー他、
「美」に敏感な方から、絶賛されているこのエッセー、
やはり、すばらしい。

内容については、あちらこちらの書評を
ご覧になっていただくとして、
ここでは、カラーリストからの見地で、
お話させていただきますね。

谷崎が言うには、日本の美の基本は、
陰、薄暗い光にあると言います。

日本人は障子や行燈を透かした光に美を見いだし、
その美をさらに引き立てるように、
モノを作ってきたと。

例えば、赤だしのお吸い物、それを入れる漆の器、
羊羹でさえ、ほの暗いところで見ると、
なまめかしい艶を醸し出す。

中でも印象的なのが、
能の舞台衣装のお話です。

少し略しながら、引用しますね。

「子方のほほが紅潮しているその赤さは、
緑系の衣装を着けたときに、もっとも映える。

色の白い子はもちろんだけど、
実を言うと、色の黒い子の方が、
その赤みの特色が眼立つ。

なぜなら、色白の子は、白と赤の対象があまりに刻明で、
能衣装の暗く沈んだ色調には、少し効果が強すぎる。

色黒の子の暗褐色のほほであると、
赤がそれほど際だたないで、衣装と顔が互いに照り映える。

渋い緑と渋い茶と、二つの間色が映り合って、
黄色人種の肌がいかにもその所を得、
いまさらのように人目を惹く」

ね、すごいでしょ?
パーソナルカラーの考え方、そのものですよね。

カラー、特にパーソナルカラーは、
アメリカからの輸入品なのですが、
日本にもそんな感性があったんですね。

谷崎先生に向かって、
「すばらしい」というのは、おこがましいのですが、
これだけの感性を持っている人って、
カラーリストにもいるかしら、と思うくらいです。

他にも、日本人が万年筆を開発していたら、
今のような形にはならなかっただろうとか、
西洋文明をそのまま取り入れた日本はソンをしているとか、
うんうん、とうなずくことが、美しい日本語で語られています。

息もつかさず最後まで読み切らせる
すばらしい作品だと思います。

Beltaは、
自分で美を発見し、自分の言葉で語れること、
それがとても大切なことだということも、
この作品から教わりました。

カラーリスト、必読!
まだ読んでない人、絶対、読んでね。
Beltaとお約束♪

【2008年7月4日追記】
子どもの頃のこと、思いだしました。

祖母は、夏になると夕方暗くなっても、
電灯を灯さないのです。
時には、夕方を過ぎ、夜になっても。

電気を灯して明るくすると、「暑苦しい」というのす。

古い日本家屋で、田舎の暮らしでしたから、
夜になると、窓や玄関は開けっ放しにします。

月明かりの中、縁側で団扇を片手に夕涼み、
通りかかる友達をつかまえては、
おしゃべりしていたこと懐かしく思い出されます。

明治生まれの祖母も、陰の美しさを知っていたのでしょうね。

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